名探偵の証明

 

名探偵の証明 (創元推理文庫)

名探偵の証明 (創元推理文庫)

 

 綾川哲也賞受賞作の文庫化。名探偵の証明シリーズ第1作目ですね。

若き名探偵VS伝説の名探偵の対決かと思いきや、すごい作品だった。

 

まさにタイトル通りの作品である。主役は30年前に名探偵として活躍した男。その男も60代となり、現在では探偵業も開店休業中。そんな男が再び探偵と復活するためにある事件へと挑み、そこで現代の若き探偵と対決する。

そんなお話なのですが、タイムリーにもちょうど金田一少年の事件簿金田一一が37歳になった話が今度連載されるんですよね。その作品では果たしてどう描かれるのかわかりませんが、この作品は実に名探偵というものをよく描いているなぁと思わせられた。

特に名探偵が探偵を引退しようとする理由。それが実にリアルであり、凡人である僕にも理解できる内容で、とても切なくなった。ああ、たしかにその通りだと。いくら名探偵であっても、老い、という万人に訪れる変化には勝てないのだと。

それでも、男は抗い、立ち上がろうとする姿には深い感動を覚えるし、その結末がハッピーエンドであってほしいと願ってしまう。

また名探偵とは何なのか。その答えともいうべきものが提示されているのもこの作品の大きな特徴で、きっとそれに関してはその通りだという人もいるだろうし、いやそうではないという人もいるだろう。前述した老いに関しても名探偵と呼ばれる存在にはそんなものはない、という人もいるかもしれない。

 

ただどちらにしろ、なんにしろ、一人の名探偵と呼ばれた男の栄枯盛衰が描かれた本作はミステリー小説として非常に面白く、たくさんの名探偵を見てきたものとして、様々なことを考えさせられる一冊だった。

少なくともこの本はミステリー小説初期には誕生することはなく、無数の名探偵が世に溢れている現代だからこそ描かれたと思う。だからこそ面白い。

今後2,3とシリーズが続いているので、そちらも読んでみようと思います。

 

はぁ、ここ最近満足する作品に連続で当たって嬉しい限りです。