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通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?

第29回ファンタジア大賞の大賞受賞作。

その尖ったアイディアは素晴らしいが、中身はまだ追い付いていない感じ。

 

異世界転生したと思ったら母親同伴で、チートキャラだった。というのがこの小説のアイディアであり、設定であり、全てである。展開としては、冒険を通して母親との関係を見直す、という予定調和なもの。意外な展開とか、すごく盛り上がる展開とかはない。至って王道。母親と息子の関係を中心に描いたらそういう展開しかないよね、という展開だ。一応、続編のためにいくつか伏線も残されている。

この作品、アイディアはとてもいい。流行りの異世界転生もの×母親、なんて掛け合わせは思いつくものではない。そのアイディアだけで受賞できるだけの力を持っている。

ただ残念ながら、作者の筆力がそのアイディアを完全には生かし切れていなかった。タイトルやアイディアからしてギャグ路線なわけですが、三人称視点もあってかテンポとノリが足りない。三人称視点ながら結局、主人公の真人視点に近い形で描かれているので、いっそ一人称で良かったんじゃないか、と思う。

また、基本が母親活躍or天然ボケ⇒息子が文句orツッコミを言う⇒母親落ち込む⇒息子謝る、のパターンが多く、1回、2回ならともかく、3回、4回と同じことを繰り返されるとワンパターン化してくどい。そこからの脱却が作品の基本骨格であり、今作の最終到達点なので仕方ないがもうちょっとバリエーションが欲しかった。2巻では1巻からの成長があるので、2巻以降の展開に期待である。

主人公の思春期の男の子ぶりは見事。高校生の男子なら母親に対して、確かにこんなものだろうという距離感を描けてはいる。それが好感が持てるかどうかは別だが。ちょっと母親へのツッコミが厳しいというか、責める描写が多いかな。母親が聖女のように描かれるほどに主人公の好感度が下がっていく。共感は出来るが好感は抱けない主人公だ。ここも2巻以降の成長に期待。

サブヒロイン二人に関しては、よくもなく悪くもなく、好みが分かれるところ。

 

一番面白かったのは、母親による仲間になる人の面接。RPGのお約束行事に母親の面接という特殊要素が入って、うまいことギャグになっていた。

 

思春期の男の子が母親と一緒に異世界転生して、少しの成長と親子関係の見直しを図る本作。

まだまだアイディアのポテンシャルを生かし切れてはいないが、ゆえに今後がすごく楽しみな作品でもあります。姉キャラが出て母親が焦ったり、料理バトルとか、掃除バトルとか、今後の作者のレベルアップ次第。

今後が楽しみです。