『君の名は。』感想

 

 新海誠監督の最新作「君の名は。」を鑑賞してきました。

満足感が非常に高い。最高に楽しかった。最高のエンターテイメント作品でした。

本作は新海誠版の『千と千尋の神隠し』に思えた。

 

 

さて、本感想はネタバレを含みます。ネタバレが嫌な方は映画館で観てから、これ以降をお読みください。

 

新海誠版の『千と千尋の神隠し』とは言ったが、内容がそうだというわけではない。個人的に宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』は宮崎駿にとっての集大成的な、宮崎駿要素を詰め込みまくって出来上がった作品だと僕は思っているし、初めて見たとき、あれはナウシカと同じだ、ラピュタだ、トトロだ、などと思った。

つまるところ、その監督の要素が詰め込まれた作品、ということである。

本作はこれまでの新海誠監督の作品を見てきた人なら既視感を覚える要素が要所要所で現れている。宇宙と時間差が『ほしのこえ』、夢の中での触れ合いが『雲の向こう、約束の場所』、桜とすれちがいの『秒速5センチメートル』、あの世とこの世の『星を追う子ども』、花澤さんのゲスト出演や新宿、東京の風景を示す『言の葉の庭』と観ていると今まで観てきた映画の要素が入っている。そしてエンディングを迎えたとき、なんていうか救われたような気持ちになる。

やっと、やっと叶ったような、そんな気持ちにさせられる。これはたぶん、新海誠監督の作品を観てきた人なら同じ気持ちになると思う。どうせなら、8年ではなく9年だったらな、と思う。9年だったら、ちょうど合うのに。

 

そんな本作。おそらく根幹と化す設定自体はかなりベターな方。これまでの作品に比べればかなり普通ともいえるし、わかりやすいともいえる。ただその設定の上に成り立つ物語はきちんと伏線が敷かれ、視聴者の予想を裏切り、それでいて破たんのない展開を見せている。たぶん、これまでの新海誠作品を観てきた人だと「あれ? ちゃんとしたストーリーになっているぞ」と思う。前々から新海誠監督は原作付きの方がいいんじゃないか、と思っていたが本作のような作品を出されたらもう何も言えない。

個人的な予想では脚本協力のところに名前があった、これまで何度も新海誠監督の作品をノベライズ化してきて、高い完成度の小説を提供してくれた加納新太さんの力が大きいんじゃないかと思う。でなければ、こんなにもわかりやすく、綺麗な物語になるはずがない。たいてい、新海誠監督の作品は描写不足で小説を読んでそうだったのか!? と驚くことが多いのだが、本作では映画だけで全てが説明されている。これは大きな変化と言ってもいいし、今後とも加納新太さんに脚本協力をしてもらった方がいいとも思う。

 

もうね、冒頭のオープニングからしてすごい。作品全体を示すような映像が流れるのだが、最後のエンドロールを観たら原画に錦織敦司とか名前があって、なにっ!? と驚いた。オープニングだけでもすごい豪華な原画陣だし、それだけ力が入ったオープニングは最高にテンションを上げてくれる。

面白い物語が始まる、という期待感を持たせてくれる。

加えて、冒頭で『言の葉の庭』のヒロイン・ユキちゃん先生が登場するというサービス。まだ作品にのめりこむ前だからこそ、素直に楽しめるタイミングでの登場と大事な伏線を敷くという二つの大きな仕事をしている。

そこからの展開はかなりアップテンポでスピード感がある。PVとかで夢の中で互いの意識が入れ替わっていることが視聴者の前提知識としてあるから、グダグダとそこに時間を割かない。物語はテンポよく進み、すれちがいながらも奇妙な交流を重ねる二人や笑える要素が描かれている。それでいて中盤から後半のための伏線がしっかりとしかれているし、舞台設定や記憶に関する説明など必要な要素がわかりやすく提示される。そしてそこでRADWIMPSのアップテンポな挿入歌だ。これがさらにスピード感を高め、こっから物語がさらに展開しますよー! と視聴者を煽ってくる。

そして中盤、すれ違いと絶望、伏線が生きて繋がっていく展開。夢から覚めて時間が経つと記憶が曖昧になっていく。その舞台装置が非常に生きてきて、物語を盛り上げていく。忘れては思い出し、忘れては思い出し、それを繰り返す。それをワンパターンと取るか、運命をひっくり返そうとする二人の絆とみるかは視聴者次第か。

最後は本当に気持ちのいいエンターテイメントに仕上げてくれた、と言わざるえない。加えて、季節を冬ではなく、春にしたのは絶対に昔の作品を意識したからだと思う。そして昔の作品があるからこそ、視聴者は願う。今度こそと願う。

それが叶った瞬間、救われた気持ちになるんだ。

そしてメインポスターなどで描かれた絵を観て、すごくいい気持になる。

 

パンフレットを読むと、新海誠監督が全身全霊をつぎ込んだと伝わるんじゃないか、と書かれていますが、伝わりましたよ! すごく面白かったですよ!

この作品で新海誠監督の作品に初めて触れる人は、純粋にエンターテイメントのアニメ映画として楽しめるでしょうし、僕のようなファンは集大成として楽しめる。

 

声優陣に関しては、個人的には全く気にならなかった。むしろ、本職の声優である悠木碧の声のがよく聞くから気になったくらい。主役二人に関しては難しい役柄を上手に演じていたと思うし、キャラに凄く合っていた。ジブリみたいなひどいことにはなっていない。

定番の風景もそれはもう綺麗でしたとも。初めて新海作品に触れる人はこの風景だけで圧倒されるはず。他では見ることができない圧倒的な美しさがある。

音楽も予想以上にRADWIMPSの曲が挿入歌として入っているのに驚いたくらいかな。作品にマッチした綺麗な音楽で良かった。

 

すごくいい作品であり、すごく楽しい作品。面白かった!

一つの完成度という枠組みなら本作が今までの作品の中で一番高いと思う。

これが夏休みの最後に公開とか、もったいないくらい良い映画でした。