自分史上最高のラノベ

 

echo―夜、踊る羊たち (ファミ通文庫)
 

 ハッカドールが自分史上最高のラノベをシェア使用キャンペーンを開催している。

twitterはしているものの、非公開なので、公開しているブログに書こうと思います。

 

正直、すごく悩みました。自分史上最高のラノベラノベを読んで約20年、数々の名作を読み、影響を受け、自分を本好きへと導いてきた本たち。その中のベスト1を決めるということで、悩みに悩みました。

ラノベの入門書であった『ブギーポップは笑わない』なのか、青春時代を過ごした『気象精霊記』や『ザ・サード』なのか、あるいは百合に目覚めた『マリア様がみてる』なのか、それとも源流となる『奇跡の知性』なのか、思い出の一冊『愚者のエンドロール』もあるし、感情を揺さぶられた『テイルズオブファンタジア 語られざる歴史』もある。ずっと完結を望み、痛々しいのに読み続けた『ダブルブリッド』、逆に鮮烈な印象を残したまま終わった『リング・テイル』や『消閑の挑戦者』、『PAIN KILLER』、1冊の中にできた世界観に衝撃を受けた『カレイドスコープの少女』や『12月のベロニカ』、青春を思い出す『こんなに緑の森の中』や『学校の階段』など主に以前書いた『俺が選ぶライトノベル32傑』の作品群の中から悩みに悩みました。

その中で最後に選んだのが冒頭にある『echoー夜、踊る羊たちー』だ。

 

作者である枯野暎は、『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』でラノベ界隈では有名になりつつあるが、ぶっちゃけ、僕はそれを読んでいない。悲劇が見えた作品に興味はない、というか、嫌いなので。

なので、実は枯野暎にはこんな作品があるんですよー、とかいう目的で選んだわけではない。単純にこれまで千冊は読んだ中で、一番、と思えるのが『echoー夜、踊る羊たち』だっただけである。

もっとも、10位くらいに入る作品はどれも僅差で、甲乙つけがたい。『気象精霊記』や『ザ・サード』『ブギーポップは笑わない』など1位になってもおかしくないし、1位といってもいいレベルで好きだ。

それでも、僕が『echoー夜、踊る羊たちー』を自分史上最高のラノベとして選んだのは、この作品が持つ力、なんだと思う。

1作完結作というのなら、『ブギーポップは笑わない』や『気象精霊記』、『ザ・サード』の1作目は凄いし、『12月のベロニカ』や『マリア様がみてる』『奇跡の知性』『こんなに緑の森の中』などどれも凄い。その本一冊持ち寄って語り合いたい。

テイルズオブファンタジア 語られざる歴史』なんて、『テイルズオブファンタジア』をプレイした人には絶対に読んでほしい、と思うくらい素晴らしい作品だと思う。

 

そんな多数な作品の中で『echoー夜、踊る羊たちー』は、少し変わっている。

感動する、というものとも違う情動を持つ。あらすじだけを読むなら「兄妹」の物語である。が、読んでいくとわかる。これはただの「兄妹」の物語ではなく、ミステリアスでファンタジーで、独特の空気感を持つ作品だということを。

蜃気楼のような作品、というのがしっくりくるだろうか。正直、こんな空気感を持った作品と出会うことはめったにない。ブギーポップシリーズのペパーミントの魔術師、が近いかもしれないが、あれとも方向性も違えば、内容も近くない。

伝奇小説、というのが一番近いだろうか。

その空気感。文章全体、作品全体を包み込む薄い靄。さんさんと輝く夏の日差しと、揺らめいて、ぼんやりとした世界、そして明るい世界を反転させた闇、それらが混じり合い、描かれた本作はライトノベルという範疇にあって、とても異質で、でもラノベなのだ。

たぶん、ハードカバーや今のラノベ文芸ではだめなのだ。ライトノベルという中でこそ、この作品は輝き、そして埋もれる。そういう作品だ。ファミ通文庫という装丁、イラスト、それらすべてがうまく合わさっている。

 

だから、この作品を選んだ。万人受けするものではない。読んだ方が、この程度? と思ってしまう要素もたくさんある。

それでも、自分史上最高のラノベを今聞かれたら、悩んだ末に、この作品を上げるだろう。