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つくも神は青春をもてなさんと欲す

つくも神は青春をもてなさんと欲す (スーパーダッシュ文庫)

つくも神は青春をもてなさんと欲す (スーパーダッシュ文庫)

スーパーダッシュ文庫はたまにすごい当たりを持ってくるな。
新人のデビュー作らしい粗さはあるものの、全体としての面白さは非常によくできている。
 
骨董品店生まれの高校生物部惣一のもとへ、ある日祖父から茶釜が届く。それは幼い少女の容姿をした付喪神が道具と化したもので、ある特殊能力があり…!?
というお話ですが、全体として主人公が能動的に動いていることに好感が持てる。惚れた相手を笑顔にしたいために頑張る、というのは非常にわかりやすく共感が持てる理由づけで、文章がベン・トーを連想させるくどさがあるものの、先を読ませる力があった。
新人デビュー作らしい、持てる力を振り絞りました、という感じ。
舞台が熊本県という時点で、意外性がありすぎる。絶対に作者が住んでいるか、住んでいた街だろうと思いました。実際そうみたいですね。
 
全体的に登場キャラクターがシンプルにまとまって、一人一人がきちんとキャラクターとして立っているのがよい。
232ページの主人公と親友の視線の会話が面白すぎた。この親友キャラのオタクぶりが鼻につかないのは作者の技術と感性がよい証拠。安易にパロディに頼らない会話劇は非常に好感が持てる。最近はパロディに頼りすぎる作品が多すぎる。
今後もこのぐらいを維持してほしいとは思う。
 
中盤からはバトル要素?がでてくるが、まぁこうする以外ないよなぁという感じ。バトルへの転換の仕方も悪くはないが、前半から中盤までその気配が一つもなかったのが問題点ですかね。早めに匂わせる伏線を置いておくか、要素を持たせておいたほうが良かったかもしれない。
 
よくできた良作。この作品をヒット作へと導けるかどうかはスーパーダッシュ文庫の編集部次第か。
ただ安易なハーレムなどにするのは危険。最後の主人公の鈍感ぶりはそれまでの流れを無視したかのようで違和感がありましたし。この主人公が相手の好意に対して鈍感なのはおかしいよっ! そんなそぶりないし、相手の考えに気付いている描写が多すぎた。
 
バトルやシリアスはスパイス程度で、続編があるなら暖かく優しい作風を維持してほしいと思います。
良い作品。破壊力は足りないけど、十分他の人にお勧めできる良作です。