読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

リリーベリー―イチゴショートのない洋菓子店

ライト文芸

んなわけあるか。田舎なめんな。
この言葉をこのタイトルと表紙から想定できる人は果たしているだろうか? いい意味で表紙に騙された本作。作者の言葉のセンスを感じさせる良作でした。
 
面白い感想文というのは冒頭に気になる文言を置いて読者となるかもしれない人の注意を惹くそうだ。ネットで言われてました。
メディアワークス文庫だとラノベに近いので、表紙とタイトルと作家が重要になってくる。この視点からこの本のターゲットを想定すると、女性なんだろう、と予想はつく。それが中身を読めば、おいおいなんだこの肉食系は、である。
 
話は肉が大好きな女子がひょんなことから一年間限定の洋菓子店で働く、というものである。そのなかで色とりどりの洋菓子と肉と酒と果物が登場する。まさに酒池肉林な物語である。ごめんなさい、嘘です。
イケメンと洋菓子と肉と酒と果物と宴があるだけです。……あれ、嘘じゃない?
 
正しくは夢に対してもがき苦しむ青年と乙女の物語なのです。この物語、一年単位で動いていくタイプなので、盛り上がりの面では若干弱い。キャラクターの個性も突飛な人もモブにはいるものの、メインどころは普通の部類に入る。他と比べて地味な要素が多い中で、光っているのが作者のセンスだ。
作中において、「豚トロ」という言葉の登場から本質が出てくる。表紙から冒頭までに築きあげてきたコーティングではこの作者のセンスは隠しきれない。
ヒロインがイケメンに対して「肉を食べなさい肉を!」なんて言い出してからもう止まらない。『肉を食べ、竹下は一応回復した』という文を想像できるだろうか、この表紙で。
 
とにかくこの意外性。パロディに頼らない会話の面白さ、イベントの数々は最近のラノベに辟易としていた僕のツボを的確についてきた。一年の間に数々の称号を手にし、軽トラを操るヒロイン。うん、残念ヒロインは最近のラノベブームだが、一味違うね。
この作者のセンスの高さ。これがこの本の売りである。
まだ手に取っていない人はぜひとも読んでほしい。この作者のセンスに僕はファンになりましたよ。
表紙から購入しときながら今日まで後回しにしていた過去の自分をぶん殴りたいですねっ! それくらい良かった。