桜色の春をこえて

桜色の春をこえて (電撃文庫)

桜色の春をこえて (電撃文庫)

百合だろうと当たりをつけて読んでみれば、百合といえば百合だけど、続編が欲しいかな。
電撃文庫はたまにこういう普通の文芸書にありそうな話を出しますよねー。
 
さてさて、不良娘との同居生活を描いた本作。作品としては非常に地味で、カタルシスもほどほどですが、文章が好き。
近年の描写が淡白な一人称小説とは正反対のみっちりと描いた文章。それが前半はテンポを悪くしているものの、個人的には密度を濃くして描いてある文章は非常に好みです。
作品の中身は親に捨てられた子供同士の交流で、あまり珍しいものではない。第一章第二章の段階でおおよそ後半のオチは読めてくるので、さして意外性は感じないが、そこまでを丁寧に描いているので作品として好感が持てる。
ただ全体的に伏線に使えそうな部分が特に使われることがなく、結局主軸だけで終わってしまったのは残念。もちろん、細かい伏線や小物を配置してあるので、プールに宝石をばら撒いて、いくつか拾い上げたというところでしょうか。
文章・話の構成・展開力はどれも好み。僕的には巧いと思うが、前半の掴みまでテンポの悪さが難点か。あと枠に収まりすぎていて、こちらの予想を超え切れなかったのも残念。
 
百合としては徹底して二人を軸にしているのがよい。
ただ両方に傷のある過去というのはうーん、過去を強調しすぎてヒーリングとしては物足りず。
 
個人的には続編をだして、もっと二人の仲を描いてもらいたい、かな。ヒーリング色を強めてくれると今の電撃文庫にはない軸を作れそう。
安易な萌えに走らない、淡白な文章になっていない、あとはもう少し情感が加わるとよし。
電撃文庫がたまにだすヒーリング系の本ですが、けっこうよいかと。
表紙買いした人を満足させるだけの中身があると思います。この文章、萌えに走らない形で、二人のいちゃつきをもっと読みたいな。
そう思わせる百合小説です。