読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

秒速5センチメートル one more side

秒速5センチメートル one more side

秒速5センチメートル one more side

新海誠秒速5センチメートル加納新太が描く、もう一つの秒速5センチメートル
まだ第一章を読み終っただけですが、その繊細な描写に久しぶり本の世界に沈みこんでいます。
 
作品は全三章で原作と同じですが、第一章からして視点がタカキ視点ではなく、アカリ視点で描かれています。
そのアカリ視点で描かれた世界が、とても綺麗で、幸福に満ちていて、凄く繊細で、心地よい。
桜の花びらが舞い落ちる姿を見ているように、綺麗で、繊細な文章です。
 
たった一章の中に、はっとするような文がいくつもあって、とてもいい気持ちになっています。
残り二章でどういう評価になるかわかりませんが、この第一章だけでもこの本を買った価値があったと思わせる文章があります。
 
全てを読み終ったときに脱力感でいっぱいになりそうな気配があります。

********************
追記
********************
ようやく全三章を読み切りました。非常に素晴らしい原作補完小説です。
加納新太さんは『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』でも素晴らしい原作補完小説を書いてきましたが、本作は特に原作があいまいにして描ききれなかった部分を描いていました。
 
全三章、原作と同じ区切りで、一章がアカリ視点、二章がタカキ視点、三章がアカリとタカキの視点で描かれており、PVと評される第三章の補完、また第二章で澄田花苗視点で描かれたために漠然としていたタカキの考えや想いが、描写され、すとん、とようやく理解できた気がします。
第二章、第三章ともに素晴らしいできだと思いますが、第一章は群を抜いてよく出来ている。
『警戒心のロックが一段階外れる音が、私の中でかちゃりと響いた』
特にこのフレーズが気に入った。読んでいるこちらまで何かロックが一段階外れるような、そんな素敵な文だ。
 
とにかく第一章のタカキとアカリの恋愛は素晴らしい、としか言えない。非常に秀逸な恋愛小説である。洗練された文章が少女の幼さと大人の女性の視点が組み合わさって作られており、この時間がいつまでも続けばいいのに、と読者が思う世界が描けている。
そして最高の盛り上がりを第一章で迎える。それはこの物語として正しく、残りの二章は早期に完成されたものに触れてしまったがゆえに道に迷うタカキの心が伝わってくる。
そりゃ、こんな体験をすればそうなるわ、と読者が思うだけの説得力が第一章にはあり、第二章・第三章でタカキの迷い、そして振り切れが描かれると同時に最後のすれ違いの意味を描いている。
 
非常にいい小説です。
秒速5センチメートルを見た人はぜひ読んで欲しい作品。原作補完具合が半端ないです。