喰-kuu-

喰-kuu- (MF文庫J)

喰-kuu- (MF文庫J)

題材に大食いを選んだ目の付け所は天下一品。テーマや題材はよく出来ているが、熱さが足りない。
そんなMF文庫第6回新人賞受賞作優秀賞受賞作品。今後の調理の仕方次第で化けるかも?
 
まずこの作品を読んだ読者の大半がSD文庫の『ベン・トー』を意識することは編集部の時点で読めているはず。MF文庫ってそういう文庫だと思うし、あとは作者の技量が今後どこまで伸びるかだろう。
作者の伸び次第では『食』の二大小説としてラノベでがんばれるかもしれない。
 
さて大食いと言うと昔、草なぎ剛が出たドラマ『フードファイト』が懐かしい。ウィキペディアを読むと色々とあって封印状態らしいが、あの作品は面白かった。
また大食いを主人公としながらも別基軸で描いた『喰いタン』。あちらは食と推理を掛け合わせた作品として良く出来ている。
小説にかぎらず、漫画やドラマなどでも描かれる『大食い』それは十分人を魅了させる題材であり、目の付け所としては素晴らしいと絶讃する。
 
一つの道を強制的に断念することになった主人公が新しい道を見つけ、その道を突き進もうとする。
いいテーマだし、わかりやすい。
 
わかりやすいテーマ、魅力的な題材、キャッチーな表紙。
良い材料は揃っているものの、まだまだもう一歩。
キャラクターは今後の展開次第でどうにでも出来るものの、描写不足――読者へ伝える熱さが足りない。
ベン・トー』を真似ろとは言わない。あれはあれでくどくて重くて、もうちょっとどうにかならないのか、と常に思う重たい中身。そこまでいけとは言わないものの、大食いシーンはもっと重くてもいいと思う。
苦しさ、辛さ、絶望感、そんなものをもっと出しても良かったと思う。
また、挑戦への下準備・トレーニングの描写不足が否めない。理論的にしようとはしているものの、誰もクリアしたことがない挑戦をするのだからもっともっと下準備やトレーニングの苦しさを描き、カタルシスを得られる展開にして欲しかった。
 
優秀賞。まさに優秀と言うべき作品。
下地とキャラクター、あとは論理的なトレーニング。この辺りが加わればもっと面白くなると思う。
良い作品です。ネタ気分で買った人を満足させるレベルはあると思います。