放課後探偵団 (書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー)

東京創元社デビューの新鋭五人が放つ学園ミステリの共演、全編書下ろし!
1980年代生まれの作家が描いたアンソロジー。とんでもないレベルの高さ、面白さ、です。
 
これは面白い! 青春ミステリー好きとしてはこのアンソロジーに100点をつけたい。
今年読んだ本の中で一番面白く、アンソロジーを書いた作者の本を全て読みたくなりました。
 
購入動機は似鳥鶏さんの名前が入っていたのと、学園ミステリーだったため。この二つに惹かれて、読んでみたら面白いし、密度は濃いし、ミステリーとしてわかりやすく、人が死なない。
人が死ぬだけがミステリーではない。人が死なない日常ミステリーでも、これほどミステリーで面白い作品が集まるのだ。
 
特に物語の発想としてずば抜けているのが『ボールがない』だ。
ある高校の野球部でボールが一つ見つからない。ただこれだけのことをこれだけ面白いミステリーに仕上げた発想は素晴らしい。高校生らしい発想、推理の展開、突飛な名探偵は出てこない。野球部の面々が頭を付き合わせてどうしたものかと考える。
逆に名探偵が出てくるのが『お届け先には不思議を添えて』だ。
こちらは似鳥鶏のシリーズからの出張版。名探偵と助手が足と頭を使って謎を解く、オーソドックスな形を日常ミステリーに落とし込んだ似鳥鶏さんの作品らしさが出ている。
個人的に好きな作品は『恋のおまじないのチンク・ア・チンク』だ。
こちらも作者のシリーズからの出張版らしく、作中に既刊『午前零時のサンドリヨン』の内容らしき部分が出てきており、作品のアピールとして興味を惹く内容になっている。特にヒロインの女の子についてもっと知りたいと思ってしまう。
ここまでが高校生たちのミステリー。
そして『横槍ワイン』は大学生が主人公の作品だ。ミスリードと伏線、その二つと巧みに絡ませ、また高校生ではなく大学生らしいちょっとくだけた感じの雰囲気が心地よいミステリーだ。
最後が梓崎優の『スプリング・ハズ・カム』だ。
この作品が最後に来た意味。このアンソロジー全体のオチを担う作品は完璧にその役割を果たしている。
作品として、文章の構成として完成度が高い本作。けれど、その完成度の高さ以上に胸を打つ犯人の言葉。
最後にあるからこそこの作品は最大限に輝いているといえる。もしこの作品がアンソロジーのトップを飾ったとしたら、これほど作品として輝きはしなかっただろう。
 
とにかく読んでもらいたい作品。
軽い気持ちで手を出したら、作品の面白さに確実にノックアウトされるはず。
ぜひともこの作品は読んでもらいたい。この作品を読まずに2010年を終えるのはもったいないです。
 
 
 
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