小さな魔女と空飛ぶ狐

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

難点はあるものの総合点では合格点。面白かったです。
久しぶりに電撃文庫で新作品に手を伸ばしてみました。結構当たりです。
 
キャラクター・描写・こだわり、この三点が非常に素晴らしく、世界設定が難点、なのが本作の特徴である。
各キャラクターは主要6名、それぞれ好感が持てる人物で、この人物たちの話を追っていくのは非常に楽しい。
描写もしっかりと描かれており、それでいて重たくはない。ただし、説明部分や省略部分が目立つのがひっかかるが。
こだわり部分は作者の前作は知らないが航空部分なのだろう。ここの描き分はどこよりも熱が入っていると思う。こういう作者のこだわりみたいなのは大好きだ。
 
総合点で見ると非常に高い点数を取る作品で、面白い小説の一つとしてオススメできる。
話の流れ、ヒロイン・アンナリーサの変化、戦争に対するヒロインの答えの出し方、主人公の答えの出し方、この辺りに対してこの作品はきちんと向き合っている。
それに対して好感が持てるし、そーいう結論できたか、と関心と納得が味わえる。
 
ただ、先ほどから総合点というように全体で見れば高得点だが、一つ一つでマイナスがあるのもこの作品の特徴である。
おそらく読者の大半がこの作品を読めば同じようなマイナス部分に気づくのではないだろうか。
 
一つ目はキャラクターの掛け合い不足。つまるところ掘り下げ不足である。
キャラクターの個性は非常に素晴らしく、賞賛に値するのだがそのキャラクターたちの描写・掛け合いが薄い。331ページもあるのに、物足りなさを感じてしまう。全体を描ききるために駆け足となってしまい、要所を描ききるだけでページ数が埋まってしまったので細かい部分が描ききれなかったというところだろうか。
そのため、彼女たちの言葉や意志が少し薄っぺらく感じられた。
原因は明白で、相対する敵側を描いたことだろう。そちらはそちらでよいキャラクターなのだが、そのせいで主要なところが描ききれずじまいとなっている。意味があるのは読めばわかるんだけど、別にいらなくね? と思ってしまうのも確かなのだ。
この辺りは続刊が出て、キャラクターを掘り下げて行ってくれると面白くなると期待している。
 
二つ目は世界の流れの説明・科学の説明がかなりの割合を占めることだ。
科学者をヒロインにおいていて、戦争を主題として扱っている以上、色々と描く部分はあるもののそのせいでほかが圧迫されている気がしないでもない。
331ページでよくまとめたとは思うものの、説明自体はそれほど面白さを感じなかった。
その理由は三つ目にある。
 
三つ目は世界観だ。ぶっちゃけ戦争を取り扱っていて、科学を取り扱っている作品なのに、読者にはこの世界の科学技術力・文化レベルが判断できない、というのがこの作品の最大の欠点である。
この辺りは読書メーターの感想にもありますが、全体のバランスが整っていない。
基本的に読者は科学技術や文化レベルを現実の世界で基準を設ける。本作のような作品なら、読者は第二次世界大戦か、現代か、架空未来技術の三つから大まかな科学・文化レベルの基準を想像する。
なのだが読んでいると過去に行ったり、現代に行ったり、未来に行ったり、科学技術・文化レベルが安定していない。そのため読者は基準を設定できないままとなってしまい、アンナリーサの行為がどういう意味を持つのかが今ひとつ理解しづらくなっている。
 
結果、なんとも言えないまま終わってしまった感を感じることになる。
 
個人的にはこれだけの作品が書ける作者なら、次を期待してもいいと思う。
ただ出来れば次は完全ファンタジーの世界にしたほうがいいかもしれない、と思ったりする。