パパのいうことを聞きなさい!

高坂の読書感想文は必ずしも読んだ書籍を褒めるものではないことはよくあることで、本書もその一つである。
なので、ネガティヴな感想を読みたくなければ、読まないようにご注意下さい。(ネタバレも在ります)
 
 
例えば、AとBのラーメン屋さんがあって、それほど日が経っていないうちに二軒に行ったとしたら比較してしまうのは仕方がないことではないだろうか?
はからずも、「高杉さん家のおべんとう」を読んだあとだったこともあり、この作品のダメな部分ばかりが目に付いて仕方がなかったです。
そうでなかったとしても、マイガールうさぎドロップLOVE SO LIFEと子育て家族モノを読んできた僕にはこの作品で感動なんて出来るはずもなかっただろう。
 
子育て家族モノのストーリーの定番は、『家族』であることを認識することである。大体の物語でこれは第一話で提示される。第二話からは新しい家族との一つ一つの交流話が展開され、一つの巻が終わる辺りでそれなりのまとまりを作るのが大半だ。
それがセオリーであり、王道というものだ。そしてその王道をどういう風に味付けするかで作品の出来不出来が決まるといってもいい。
 
だが、本作はその第一話で丸々一冊使い切った。
どうやら最初からシリーズモノの予定だったみたいなので、作者としてはこの第一巻が第一話の位置づけだったのだろう。
それがそもそもの失敗だろう。何もかもが中途半端に終わっている。

19歳。瀬川祐太は突然、三人の少女達のパパになってしまった!
大学に合格し、新生活をスタートさせたばかりの瀬川祐太は新しい友人や憧れの人に巡り会い普通の大学生活を送っていた。
しかし、姉夫婦の乗った飛行機が行方不明になった事から事態は一変。
一人暮らしの六畳間に、中学生の空、小学生の美羽、保育園児のひなが同居することになってしまったのだ!
いきなり思春期の少女達のパパになってしまった祐太の運命は!?
ドキドキの同居生活に、祐太を慕う少女達に憧れの先輩との恋も絡んで大騒動!愛と感動満載で贈るドタバタアットホームラブコメ開幕!!

ストーリーはこんな感じだ。そして、最後に家族となった、というものだ。
この作品で問題なのは、主人公である瀬川祐太が19歳であり、大学生で後見人の資格がまだ持っていないことと同居への話の流れ方が巻き込まれ式や押しかけ式ではなく、三人の少女たちを離れ離れにしたくないから勝手に自分のところに連れて行ったということである。
だからこの物語で結末を作るなら瀬川祐太が「この子達三人を引き離すのは許さない! 無茶を通して道理を蹴っ飛ばす!」みたいなこの子達が一緒にいられるように奮闘し、勝ち取る結果ならよかった。
しかし、実際には一人住まいの男の子のところに女の子が三人まい込んできてアタフタ生活していたら愛着が湧いちゃって離れたくないよ、とダダをこねたら周りが折れた、というものだった。
主人公は結局、バイトしてただけ。

最後に感動したという人がいるかもしれないが騙されてはいけない。それはこの作品の力ではなく、家族モノの王道展開なだけだ。
何ならマイガールのコハルちゃんのお遊戯回の話を読んでみればいい。ほとんど同じだ。
この設定、この物語だからこその感動がこの作品にはない。
 
ぶっちゃけ後見人でもない親戚の叔父が勝手に姪を連れて行くのは世間では誘拐といえるのである。
ならば、グレンラガンのシモンみたいなキャラにすべきだったのだ。周囲の現代的な考え方を撃ち破るような人間。色々な問題を打ち破って、打ち破って、打ち破っていく。そんな主人公だったらほかとは異なる家族モノを描けただろうに。それは今時ではないかもしれないが、昭和の人物っぽくなってよいと思うのだ。昭和時代って妙に家族のイメージがなくないですか?
 
これでは突然、妹が出来たとか宇宙人がやってきたとか、異世界人がやってきたとかでもいいはずだ。
間違ってはいけない。家族モノはヒューマンドラマであり、ラブコメとは作りが違うのだ。だからこそ難しいのだ。
 
さて、この作品にはそれ以外にも色々と気になるところがあって、
冒頭で『波乱万丈な人生』を送ったという割には主人公は平凡で、生まれてからずっと姉と二人暮しの割に家事ができないこととかどう考えても変だろ? しかも姉に感謝し、これ以上迷惑をかけたくないとまで思っている。
そんな人間が家事が出来ない。まともな買い物をしたこともない。おいおい、と思う。
 
そしてお金がないと言いつつ、お弁当屋の弁当を制覇する。
もうね、アホか、と。お金がないなら最低でもスーパーの半額弁当でも買いに行け。ベン・トーのほうがまだ現実味があるわ。
 
ご都合主義でおさまるレベルではなく、単に現実を知らないだけ。
精一杯だったとか、見逃していたとか、そんなのは説明になっていない。バイトしてお金さえ工面していればいいだけの問題じゃないし、それは小母にも指摘されている。
 
はっきり言えば、こんな男に子供は預けられない。主人公を心配する小母さんが正しい。
作者には悪いが、楽しめるものではない。もっと家族モノの作品などを読むなりして、王道がどうなのか、このキャラクターたちでどういう物語が作れるのか再検討して欲しい。
粗製濫造してそれを知らずにお金を払って買う読者のことを考え、もう一度このキャラクターたちを考えて欲しい。
そしてもうちょっと現実に沿った物語を。

作者に問いたい。
 
貴方はこの作品を小説大賞に応募して受賞する自信がありますか?
 
 

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※追記
作者曰く、この作品は「ラブコメ」だそうです。
家族モノでないなら、この作品である理由はもっとないような気がするのは気のせいかな。
まぁ次はない。