鳥は星形の庭におりる

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適当に巡回していたら今年デビューした新人の注目作みたいなのをまとめたブログがあって、それをきっかけに普段買わない講談社X文庫を購入。
先日、bk1で購入して、仕事の都合で読めなかったのですが今日ようやく読破。
久しぶりに面白いファンタジー小説でした。
 
新人作家ということもあり、普段触れている作風とは少し違うこの作者の味を楽しめたのは大きい。この作者にはぜひ、このシリーズの続編を書いてもらいたい。
そう思える作品でした。
 
物語は貴族の娘プルーデンスが失くなった祖母の故郷であるアラニビカ島に行き、そこにある「鳥の塔」と呼ばれる人々の信仰を集める塔の謎をめぐり、周囲の大人たちがめぐらす陰謀に巻き込まれる話である。

主人公のプルーデンスは13歳の少女でしかなく、権力も力もない。あるのは祖母との日々の中で培ってきた頭脳だけである。だからこそ、権力や力にはどうすることも出来ず、打ちのめされてしまう場面が出てくる。
しかし、そこでくじけず、泣かず、弱い自分に浸らない姿が実に美しい。
口調は辛辣で、自信たっぷりなのだが読んでいる方は小鳥のさえずり程度にしか思わないくらい可愛らしいものだ。むしろ彼女が強気に発言をするたびに楽しくなってくる。
物語の後半で、主人公がきつい物言いをするがそれは主人公の魅力だと思え、と出てくるがまさしくその通りだ。
物語後半で謎を解く場面で「解けそうかい?」という問いかけに対し、
 
「お前は私に自信を問うているの? でも自信なんてただの願望に過ぎないわ。心配しなくとも解いて見せるから、黙って見ていなさい」
 
と返答するなど、彼女の強さは実に魅力的で、微笑ましい。
 
プルーデンスという少女の魅力は徹底して彼女中心で描かれていることでたっぷりと表現できている。実に可愛らしくない性格なのに実に可愛らしく見えてくるのは作者の技量の高さか、愛情の深さだろう。
個人的には2009年上半期ナンバー1ヒロインの座を上げてもいい。
それくらいこの少女はこちらが愛してしまいそうな魅力にあふれている。あと、さらりと入るエロスに未だ理解できない未成熟さがいい。少女というものをこの作者はよく描けている。
 
では、主人公以外のキャラクターはというと、魅力的ではないがしっかりと描かれている。きっちりと造詣が固定化されているし、ぶれてもいない。一人も味方がいないプルーデンスの視点重視で描かれているので、魅力的過ぎても困るのでこの程度が普通だ。
むしろ、あれもこれもと魅力的なキャラばかり過ぎるとせっかくのプルーデンスの魅力が失われてしまう。
 
この作品はファンタジーの魅力でも、謎解きの魅力でもなく、ただただプルーデンスの魅力に浸るための作品だ。
それが成功しているので、作品としては十分合格点を挙げられる。
 
しかしながら満点を挙げられないのも事実だ。
謎解きのアイテムを奪還する場面や塔の内部へ至る為の迷宮の謎解き部分、最後に立ちはだかる黒幕の部分などなどが少しばかりご都合主義となってしまっていないだろうか。
簡単に言えば、あっさりしすぎている。ハラハラドキドキする部分が感じられない。
というか、最後の黒幕登場場面はポカーンとしてしまう。えっ、なんで? である。まぁ登場する理由はわからないでもないんですけど、それなら待ち構えていることを主人公はわかっていないといけないわけで、その辺りに対する言及が一言もないまま登場されると読者は「なんで先回り出来てるんだよ!?」となるわけである。
まぁ先回りできるんですけど、なら主人公たちは判っていて飛び込んだのかよ、無策で、と次の疑問が出てくるわけでここだけはさすがに残念すぎる結果である。
 
あと冒頭部分の情報の詰め込み具合はちょっとえぐい。9ページラスト4行の造語の数々は覚悟していないと一瞬で飛んでしまう。
問題はそれくらいかな。言うほど欠点があるわけでもないが多少の禍根は残るといったところ。
 
なんにしろ、新人でこれほどレベルの高い作品を書いているのはすごい。
十人中八人は当たりだと満足できるレベルである。そしてプルーデンスの活躍をもっと見てみたいと思うはずだ。一作で終わらせてしまうにはこのヒロインはあまりに惜しい。今後成長していくたびに成熟していく彼女を見ていけるならどれほど幸せなことだろうか。
相手役は今回出てきた吟遊詩人でなくてもいい。この世界には数々の軌跡が残っているのだから、色々な登場人物が出て彼女とふれあい、成長させていってほしい。
 
ファンタジーとしての世界観もいいし、主人公も魅力的。
エロ萌え系統ばかりにシフトしていく、少年系ライトノベルを見限って少女系ライトノベルに手を出したほうが今後楽しめる気が、この作品やエノーラ、アンゲルゼを読むとしてくる。
ただ恋愛中心にならない作品を選ばないと相当な地雷となるのがネックなんですけどね。
恋愛色の薄い少女系ライトノベルのおすすめとかしているサイトないかなぁ。