エノーラ・ホームズの事件簿

エノーラ・ホームズの事件簿 ワトスン博士と奇妙な花束 (ルルル文庫)

エノーラ・ホームズの事件簿 ワトスン博士と奇妙な花束 (ルルル文庫)

ルルル文庫の海外翻訳シリーズの筆頭作品『エノーラ・ホームズの事件簿』の最新刊が発売されました。
相変わらず男性が買うには恥ずかしい表紙ですが、中身はそんな華やかさとは正反対のどろ臭さに満ちています。ええ、本当に。ヒロインがここまで薄汚れ、生傷絶えず、孤独な作品はあまりない気がします。
大抵ロンドンが舞台だと華やかな作品となるのですが、こちらは時代考証をしっかりと行い、当時のロンドンのどろ臭さや汚さ、生きることの大変さなどをこれでもかと描いています。
また恋とか愛とかそういう甘ったるい部分もありません。
 
そんな本書は今回200ページとかなり薄いです。その分、中身は凝縮されており、物語は実にテンポよく進みます。
ワトスン博士の失踪に始まり、エノーラの新しい変装と偽名、夫人宅への訪問と進みながらも、毎度の暗号や変装に関するあれこれとした蘊蓄、時代背景が滲み出る街中描写と毎度の部分が入ってきます。
その辺りを訳者の腕前でライトノベル風に読みやすく改良され、さらっと読める。
 
この小説のよいところは主人公エノーラの魅力が読者にこれでもかと伝わってくる点である。
14歳でありながら実にいい女なのだ。時代背景描写やロンドンの街並みを描写すればするほど、その中でひとりで生きるエノーラが輝いてくる。かといって完璧超人というわけではない。寂しさも恐怖も、コンプレックスもある。同時に行動力も勇気も、知恵もある。
それらを総合して、エノーラの魅力は生き生きとしたものとして伝わってくる。
 
何しろ相手は天下のシャーロック・ホームズなのだ。そのホームズから逃げながら、同時に今回だとワトスン博士を探さなければならない。
ワトスン夫人訪問時にホームズと出遇ったところなんて序盤から相当ヒヤヒヤするシーンである。もちろんエノーラもそう感じているし、読者もどうなるんだろうと焦る。玄関から出たシーンなんて実に心臓に悪い。
 
逃げつつ、同時にワトスン博士を探す。持てる術を活用して道を切り開いていく姿とそれが報われる結末は実に爽快である。
訳者によると今年の夏には4巻が読め、さらに米国で執筆中の第5巻が同時出版されるみたいな話だというのだから今後も楽しみは尽きない。
出来れば、恋愛話だけはしないでほしい。 
 
 
非常に残念なことにネットではあまり人気がない。面白い作品だと思うんですが。