アンゲルゼ

アンゲルゼ―永遠の君に誓う (コバルト文庫)

アンゲルゼ―永遠の君に誓う (コバルト文庫)

天使病と呼ばれるウイルスが人類を脅かし、天使病からアンゲルゼと呼ばれる生命体へ変貌し人類との戦いが続く世界。東京から離れた北東に浮かぶ神流島に一中と呼ばれる鴇川上中学に通う中二の天海陽菜がいた。幼くして両親を無くし、義母とも上手くいかず、幼い頃仲の良かった幼馴染み・基にも疎外されていた陽菜はクラスメイトに馴染めず、人の顔色を読みながら生活していた。息苦しい毎日で唯一幸せを感じる時は人の寄らない森で黄金に輝くマリアと出逢う事。そして、陽菜はそこで一人の少年と出会う。彼との出逢いが陽菜の運命を急速に変えていくことになる……。

今年の3月にスタートし、11月の4巻でシリーズが終了するというスピード作品はその速度だからこそ満足できる4つで1つの作品といった感じの作品でした。
作者が全5巻で構想を練っていたというのが全部読むとよくわかる。とにかく単品で読むとこの上なく不親切な上に駄作となるが、前提条件として4部作として読めばなかなかの傑作。ここ最近では珍しい作品の構成の仕方に昔を懐かしく感じる。
 
とにかく少女向け文庫から出たとは思えないほどシビアな展開が続く。こんな現実なんて嫌だと逃避していたらそのせいで周囲に被害が出て、責任を取る必要が生まれ、現実を直視したら今まで自分が嫌だといっていた世界はなんて平和で、現実はなんてシビアで辛いものなんだと打ちのめされ、それでもこの現実を守りたいから少女は決断する、そんなお話である。
甘ったるい異能力モノの作品ばかり読んでいるとこの作品は香辛料を大量に入れたカレーみたいなものである。とにかく辛くて辛くて、刺激がたっぷりと入っている。合間にある副神漬けのような優しい時間すら次の一口で掻き消えてしまうくらいだ。
 
実に容赦がない現実に対して、主人公の陽菜は本当に必死に対応しようとしている。
 
 
面白いことは確かだが、構成が合わなくて僕は読破後に深い感動とやらは味わえなかった。
確かにシビアな世界の中で健気に生きる姿は心打つものはあるが、それが2巻から4巻までずっと続くと飽きてくる。山場がないのだ。おそらく作者の構成の中では最後に大きな山場を持ってくるつもりだったのだろう。その伏線というか名残らしきものはある。しかし、全5巻が全4巻になったせいで残していた説明を詰め込むだけでページ数が来たのか、それで埋まってしまった。
人生に山場なんてものはない、なんていうリアルを描いているのならそれはそれですごいが、小説としてはどうしても物足りなさを感じてしまう。
 
こんな構成をした作者も悪ければ、5巻まで出させなかった編集部も悪いので、どっちもどっちとしか言いようがない。
あるいはこの作者はそういう作品の描き方を毎回するのだろうか。それなら編集部の問題か。
 
 
普段甘口のカレーしか食べない人は思い切って辛口大盛カレーを食べてみてはいかがだろうか。
案外、美味しいと感じるかもしれない。
この作品はそういう作品だと思う。