屋上ミサイル

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<あらすじ>大統領がテロ組織に拉致監禁されるという大事件がアメリカで発生していたものの―日本の高校生たちにとって、それは遠い国の出来事だった。それよりも、もっと重要なことがある。例えば、校舎の屋上でスケッチをすることだとか。美術の課題のため、屋上にのぼった高校二年生の辻尾アカネ。そこで、リーゼント頭の不良・国重嘉人や、願掛けのため言葉を封印した沢木淳之介、自殺願望を持つ平原啓太と知り合う。屋上への愛情が共通しているということから、国重の強引な提案で“屋上部”を結成することになった四人。屋上の平和を守るため、通行人を襲う罰神様騒動、陸上部のマドンナ・ストーカー事件、殺し屋との遭遇などに巻き込まれることになる。それらはすべて、ひとつの事件に繋がっていた。

『このミステリーがすごい!』第7回大賞受賞作! と華々しく帯を飾る文章。爽快な空と屋上の光景が描かれた表紙。第4回には『チーム・バチスタの栄光』も輩出した小説大賞の最新受賞作です。たまたまちょっとした縁で読もうかな、という気になったので買って読んでみました。
 
端的に言うと、本の巻末にある選評がすべてを物語っているというか、これ以外に言うことがないというか、読む前に一度選評に目を通してから読んだからかもしれませんが、読後にもう一度選評を読むとまさにいいたいことは全てここに書いてあるとしか言いようがないです。
 
僕は伊坂幸太郎を読んだことがないので似ているとか、イミテーションだとか言われてもよくわからないのですが、今ひとつであることはよくわかる。いやまぁ何というか、いまどきだなぁと言えそうな感じである。今時の女子高生というか若者だとこんな感じじゃないかなぁというのはよく伝わってくる。
本文にも何度か出てくるが現実感に乏しいのだ。まるで映画やドラマを見ているようだと登場人物が言い、まさにその通りな感じがする作品の作りなのだ。
ある意味、今の高校生に読んでもらえたら共感してもらえるんじゃないだろうか。実際にこんな状況になったとして同じように感じそうな気はする。そういう意味では現実をよく描いているといってもいい。
 
文章に関しては非常に読みやすい。主人公・辻尾アカネの一人称は軽快で長いのに読んでいても疲れない。また屋上部の面々の会話もセンスがあるし、テロリストたちがまた愉快だ。その辺りの軽快さといつミサイルが飛んでくるかわからない危機的状況(しかし、現実感が伴わない状況)とのミスマッチというか、現代の若者らしさ溢れる文章は読んでいて楽しい。
33歳の作者が書いた文章としてはかなり若者描写が出来ているような気もするし、若者からすればそんなことねーと言われる描写かもしれない。
 
ただ、選評にも書かれているが、偶然の乱発と作者にとって都合のいい展開はさすがに目に余るというか、登場人物が物語の中で『偶然が多すぎる』的なことを言わせても緩和されていないくらい多いのはいかがなものか? もちろん、ミステリーに偶然は付き物だし、どんな物語にだって偶然はある。
しかしながら、ここまで偶然ばかりで話を勧められると読んでいる方もだんだん辟易してくる。前半の伏線が綺麗にはまってくる、と選評者の一人は帯で謳っているが、これだけ作者に都合のいい展開だと読者は絶対にそう思わない。
もう少し必然性というものを加えて欲しい。いくつかの必然といくつかの偶然、その組み合わせがあるからこそ面白いはずだし、これはミステリーなのだから、その辺りはもっと注意して欲しいなぁと思った。
 
それに青春ミステリーとしても少々味気ない。ドラッグに暴力に犯罪。どこぞのケータイ小説かと言いたくなる。ぶっちゃけ屋上である理由が一つもない。屋上の危機と登場人物はいうがかなり苦しく感じる。
結局、この物語の中で誰も何も成長していないのではないだろうか? ああ、一人だけ成長した気もするが、それ以外は何も変わっていない気がする。それでも……いいのか。いいのだろう、たぶん。
なんと言うか、青春小説=米澤穂信作品、という鉄板が自分の中にある上でこの作品を読むと味気ないんですよね。
 
僕はこの作品を自信を持ってオススメなんて出来ません。確かに目を見張る部分・優れている部分はあるがこれを読むくらいなら米澤作品をオススメする。これ一冊の値段で古典部シリーズが3つも買える。同じような構成ならそちらの方が断然お得だ。
残念ながらその程度の小説といわざる得ない。

 
この作者の文章は確かに素晴らしいので、次を期待したい。
とりあえず、言えることは巻末にある選評が全てを物語っているということである。選評にここまで同意したのは初めてかもしれません。