征服娘。

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単刀直入に言えば、期待ほど楽しませてくれる作品ではなかった。
度々押しておりますが『エノーラ・ホームズの事件簿』を読んでいるとどうしてもチープに感じてしまう。運が悪かったというべきか、残念というべきか。僕の中で時代物――狼と香辛料やエノーラ・ホームズの事件簿など――は上記二つクラスでないと面白さを感じません。
 
話、というか時代背景や物語の背景的な要素としては面白い。貴族と庶民の対比、男と女、そういった対比が面白くはあります。その辺りに重点を置いているのもよくわかります。ただ、置き過ぎだ。
何でもかんでもそこに話を持っていくのでキャラクターに魅力が感じられない。またイラスト受けも今ひとつだと個人的に思います。あくまで個人的に、ですが。
 
スーパーダッシュ文庫系統のくっきりとしたイラスト的な絵よりもこの手の時代物だと柔らかいタッチのものか繊細なタッチのもののほうが似合っている気が僕にはします。端的に言うなら少女小説的な絵ですね。内容的にもそちら向き。
 
というか、『エノーラ・ホームズの事件簿』と話の根幹が被りすぎていて、そりゃ楽しめないわ、と思いました。
男性優位社会で女性の独立を勝ち取るために孤軍奮闘。
ただ、エノーラに比べると設定を表現するのに精一杯で人物や物語の構成まで力が足りなかったのが感じられる。
 
シャーロック・ホームズという誰が見てもわかる強敵相手と男性優位な社会と貧富の差が浮き出た現実に孤軍奮闘するエノーラと。
貴族という今ひとつ感覚がよくわからない、強いの弱いの? という相手と男性優位な社会と言いつつ主人公エライ稼いでね?婚約者もどうなん?な状態と貧富の差を出す割に微妙な現実で孤軍奮闘する征服娘マリア。
どちらが頒りやすいかといえば、エノーラだし、物語の構成的にもエノーラに軍配が上がった。
 
時代考証や舞台設定に力を入れてあるのは巻末の参考文献からわかるが、大学の卒論でないのだからそう設定を主張させる必要はない。むしろ主人公の少女を動かしまくって、その細部にこだわりを入れていったほうが味のある小説に感じた気がする。
そういう意味では、やっぱり狼と香辛料が商売という面で見ても優秀だし、時代背景の出し方はエノーラのが優れている。
 
08年のオススメの中に加えられるかといえば、否だ。
せめて上二つのクラスに匹敵するくらいでないと厳しい。
続刊次第で化けていくのかもしれないが、出遅れたことに後悔させてくれるほどではなかったことが残念だ。