ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。

ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。 (一迅社文庫)

ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。 (一迅社文庫)

 ライトノベル新創刊の一迅社文庫のなかでもっとも期待していた作品は、その期待通りのクオリティと面白さを発揮してくれ、喜びを感じさせてくれました。
 何が面白いって会話が面白い。元がシナリオ畑というか会話でプレイヤーを楽しませるエロゲーライターだけあって、会話のテンポが素晴らしく、会話のキャッチボールが出来ているようでまったく出来ていない。だけれど、その齟齬が読者的にはピエロの演技を見ているようで笑えるのだ。
 キャラクターもわかりやすく、かつ必要最低限しかいないので把握がしやすい。主要登場人物は多く見積もっても5人か? かといって、このネタならいくらでもサブヒロインを登場してマルチエンディングなんてものまで出来そうだ。
 会話とキャラクターの個性が際立つがシナリオもうまい。多少描写不足と起承転結の転と結が急ぎすぎるきらいがあるが、全体を構成する謎の運び方やその開示、読んでいてあっと驚くほどではないが物語がよくまとまっていると感心させられる。
 個人的にはやはりもう少し贅肉が欲しいといったところか。会話の贅肉はたっぷりだが、エンディングへ結びつけるための贅肉がすっきりと引き締まりすぎている。なので、感情移入が難しいかもしれない。
 
 なんにしろ、読んでいて心地よい。読後感も爽快で、期待通りとしか言いようがない。
 何を買うか迷う人は、これに手を出しておけばまず間違いないと思います。