阪急電車

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 第一〇回電撃小説大賞受賞後、電撃文庫のハードカバーの先駆者であり、ライトノベルと一般文芸の間にいる有川浩さんの新作『阪急電車』を読みました。同じ間にいる存在としては、米澤穂信さんはミステリー小説派で、先日直木賞を受賞された方は一般文芸派、有川浩さんは確かライトノベル派に傾向として属しているようにインタビューなどを読んで判断しております。
 今回の新作『阪急電車』もライトノベルというより一般文芸家あるいはエンターテイメント小説よりで、出版社からしていつもと異なりますからね。しかし、面白さは相変わらずです。
 
 物語は阪急電車今津線を舞台に、宝塚駅から西宮北口駅までAの駅からBの駅までの電車の中でのお話や駅のホーム、またその周囲のお話です。登場人物は多種多様で、互いに知り合いというわけではなく、Aの話の主人公がBで登場したり、Bの主人公がCで登場したり、Cの主人公がAの主人公と知り合ったり、それはもう巧みに組み合わさりながらも、大半は行きずりの関係です。名前すら知らない人同士が電車という舞台で様々に交わりあうんです。
 物語は宝塚駅から西宮北口駅まで行き、そこで折り返しです。この折り返しという発想と展開が実に見事でページを捲ってその表記を見たときにはなにやら胸に感慨深いものを抱きます。
 
 物語はどれも不幸(?)から幸福へ。その連鎖です。世の中を退屈しきってひねくれているような僕からしたら、とても甘く幸せな物語で胸が苦しくなるくらいです。本当に、その幸せを分けて欲しいくらいです。
 ここに登場する人物たちを嫌う人はいないと思います。あるいは、こんな甘い物語りねぇと思う人はいるかもしれません。でも、物語の世界くらい幸せでいいと思いますし、こういう幸せがどこか現実にありそうで、なさそうで、そう云うのを考えながら電車に乗るようになると世の中もう少し面白くなる気がします。
 どこにでもいそうな人たちが、どこにでもありそうな物事と出遇い、それを読む僕は『あるなぁ』とか『はっ』と気づいたりします。
 
 この本はやっぱり阪急電車今津線の図書館においといて欲しいなぁ。あと小学校から高校までの図書室にひょっと置いてたら面白いだろうなぁと思います。
 ほら、富山県の議員が富山県が舞台のtrue tears富山県で放送するよう働きかけた件があるじゃないですか。ああいうのがこの小説でも起こって欲しいなぁと思ってしまう、そんなお話です。

 個人的に阪急は嵐山―梅田間かなぁ。大学四回の就活でいっぱい利用し、けっこう個人的にドラマもあったりするんですよねぇ。懐かしいです。