暗いところで待ち合わせ

 一人暮らしする盲目の女性の家に、犯罪者が侵入して一方的な同居生活をはじめる。そんな斬新で実感の伴う魅力的な設定を持つミステリの映画化。原作の乙一は17歳という若さでデビューした人気作家で、この原作も彼が23歳のころに出したもの。
 
 友人に乙一大好きっ子がいたので、その影響で、レンタル開始直後にDVDのコピーだけはしていたのですが本日まで視聴せずに放置しておりました。見る気になったのは、他に見るものがなかったのとずっと気にはなっていたのでいい加減消化したかったというところでしょうか。
 
 日本的な良い映画だったと思います。乙一らしいシナリオと主人公のミチルを演じる田中麗奈の演技が光っており、静の映画ではありますが最後までそれなりに楽しんで見れました。
 シナリオに関しては、実に乙一らしいもので、ただ日系ハーフというだけでいじめられるという原作からの改変とラストの盛り上がりにかける展開以外はよかった。特に超映画批評でも言われている父親の葬式の際、母親が関係する一連のシーンは素晴らしかったと思います。彼女が"見た"母親は、喪服ではなく思い出の中の白い服を着ている。というのが実に素晴らしかった。ここは演出の勝利でしょうね。
 逆に日系ハーフというだけであれだけ苛められたり、杖を付いている人に対しての反応や終盤のセット臭い窓の向こう側の風景は現実的じゃないだろ、と突っ込まずにはいられず、もったいなかった。特に最後の盛り上がりである終盤の部屋の外の風景があまりにセット丸出しだったのは興醒め。物語の展開上、低予算だと思うんですけど……あの風景はないですね。窓から見える風景は物語上大切なものなのに。
 あれで一気に物語がチープになってしまいました。
 
 基本的には、超映画批評で書かれているとおりで田中麗奈の演技が素晴らしかったに尽きると思います。ほとんど会話がない物語の中で、その所作のみで見ている人に主人公の人となりを伝える演技力は見ていて感嘆の息がこぼれてしまうほど。
 
 乙一の作品はシナリオが素晴らしいので演出と改変、それに役者のレベル次第で十分に名作になるものが多いですし、この映画は完全な当たりでしょう。
 次は準新作に落ちた「きみにしか聞こえない」でしょうか。映画館では「KIDS」がしていますし、夏には「死にぞこないの青」が、さらに「GOTH」も映画化決定していますし、本格的に乙一作品の消費が始まったみたいですね。はてさて。
 とりあえず、邦画では安心してオススメできる逸品。役者の演技やシナリオを楽しみたい人は見ると良いかも。