読書感想文

 コミケから約一週間がたち、ようやく半分くらいの本が読み終わったので、小説のみに限定して感想を書いていきたいと思います。今のところ、総じてレベルが高く、同じくモノを書いている人間としてはへこまされるばかりで、もう本当にそのレベルの高さ、構成力、表現力、創造力に白旗を揚げております。
 毒を含んだ感想となるでしょうが、そのレベルの高さに白旗を上げた負け犬の遠吠えぐらいだと思っていただけるとありがたいです。また、ネタバレを含みます。この感想文を読んだ人がその本を買いたくなるようにオススメする推薦文ではなく、僕個人の傲慢な感想文だということを理解して、お読みください。
 その覚悟がなければ、決して読まずに、下記のコミケのレポートでも読んでてください。

【JUNKYARD】:「図書館へ行こう」:http://www.na.rim.or.jp/~hayasita/junk_yard/index.shtml

 図書館を舞台にした四篇の競作(?)物語。四人の作者と四人のイラストレーターによるもので、編集者もいるかなり歴史のあるサークルの小説みたいです。総論からいえば、面白いけれど重たいです。全体として図書館特有の暗さというか、重たさがあって、僕の読み合わせが悪いのかもしれませんが、【三途の川】:「司書の樋口さんと図書委員の私」のあとに読むとその重厚さに疲れを感じました。
 もちろん、小説としてのしっかりとした内容があるわけですが、どれか一編にでも清涼剤になるような、言うなれば図書館にある窓のような存在が欲しかったです。司書がおり、木製の机と椅子があり、本棚が並び、そこには分厚い図書が並んでいる。でも、その図書館には来館者が息を抜くための窓がない。そんな一冊でした。
 第一編『同級生と図書館』は話の構成が光る作品。「K」の予想はおそらく読者のほぼ全てが気づくが、そこで終わらせずにさらに物語に『転』を与えたのがうまい。ただ、最後の『結』がいささか甘い。『来年の』の部分がいささか唐突である。何故、来年なのか? それがよくわからない。また、冬休みとしか表記がないと、年末感が出ないので余計にその辺りに違和感を感じる。
 第二編『邪悪な司書と図書館』はタイトルとの齟齬で意表をつきながら、最後でタイトルどおりであることを読者に気づかせる演出が光る作品。主人公である男の子の子供らしさがよく表現されている反面、説明過多なところもある。子供っぽい主人公なのに、いやに説明が詳しく子供らしくない。いっそ三人称での少年視点の方がバランスが良かったかもしれない。しかし、この邪悪という辺りの図書館のどこかにありそうな暗部の抽出の仕方は見事。
 第三篇『女王と図書館』は作者が『あざとい』というようにあざとい百合の作品。ファンタジーをこの短さでまとめたのは秀逸だけれど、その弊害か説明口調が目立つのが残念。もうちょっと余計な肉を切り落としてスリム化するほうが良い感じ。どちらかといえば、政治問題とかの話はもう少し適当で、主人公二人にスポットを当てたほうが光り輝いた印象がある。とはいえ、この百合、堪能させていただきました。
 第四編『図書委員長と図書館』は爆け切れなかったコメディ小説といった感じの作品。どうも作者の普段の作品と違うのだろうか? キャラクターは際立っているのに、今ひとつ全体として爆けていない。つまるところ、笑えない。よしあの強烈な個性はすごい。内に秘めた心とか、うまいと思う。ただこれほど強烈な個性を持つキャラクターを扱うにはこれほど整ったものだと逆に難しいのかなぁとも思う。
 
 全体として、全ての作品に読み応えがあり、満足できる作品ばかりである故に、辛い文章というか、毒を吐いてしまう。表現や書き方で色々と勉強になる部分が多く、このレベルに達しないと同人誌なんて出してはいけない、と思ってしまった。

【三途の川】:「司書の樋口さんと図書委員の私」:http://yatai.web.infoseek.co.jp/cgi-bin/fswiki/wiki.cgi/sanzu

 図書室にいる司書さんと図書委員の主人公を中心においた、テーマブックを絡ませた百合物語。
 表紙もイラストもなのですが、全体に軽くて心地よく読みやすい。それでいて、最後のテーマブックの紹介なんかはくどくなく思わず読みたくなる紹介だから、筆者のレベルの高さを感じさせる。
 一編一編はショートショート並の短さで、特に何かがテーマとなっているわけでも、感動を呼び起こすわけでもなく、テーマブックを巧く絡ませただけの実に気楽に読める内容。図書室に差し込む日差しのような本といえばいいのだろうか。テーマブックを惜しすぎるわけでもなく、中心はやっぱり二人で、そこに挿入される感が巧い。
 総集編だから終わるかと思ったら半分で、それにはさすがに驚くと同時にショックだった。逆に考えれば、まだまだこれからも楽しませてもらえるので嬉しいのだけれど。
 難点をつけるとすれば、キャラクター紹介とかあってもいいかもなぁとも思ったりもする。別になくても一向に構わないんですけどね。
 薄いですが、良い本なのでカバーを付けて保存しているのはここだけのないしょです。

【nonagram】:「Dancin' in the wind」:http://www.wind.sannet.ne.jp/nona/

 本の装丁からして、これぞ同人誌といった感じがする素晴らしき図書。「父は戦死、母は蒸発。町にひとり取り残された少女は、「屍体洗い」の仕事で日々の生活費を稼いでいた。ある日少女は仕事場のシャワー室で1通の小汚い手紙を拾う。それは遠い戦場で戦死した兵士――彼女が洗った屍体のいずれかが落とした手紙だった。」という物語です。
 この作品は、何より伏線の張り方と回収が巧く、また読後にわかりやすいので伏線の勉強をしている人にはもってこいの作品です。(どういう説明だ)。また、表現が綺麗で、麦の畑とかは原風景に訴えかけてくるような感じでした。おかげで、読んだあとに自分の実力のなさに大層凹みました(凹んでばっかり)。
 あとはもうちょっと物語に起伏があるといいなぁと思いました。全体的に平坦なので、最後の部分で盛り上がりに欠けた印象があります。あそこはもう少し焦燥感を煽るなりして欲しい反面、最後の締めがああなるなら、それだと変になるのかなぁ、と思ったり、うーん。
 とにもかくにも、原風景に訴えかけてくるような作品でした。

【Sepia Color】:「雨あがり」「For the Smile」「写真」:http://www.geocities.jp/hba97970/index.html

 テーマに沿って仕上がっており、絵本としてはそれなりに楽しめるけれど、唐突に話が飛ぶのがもったいない作品。書き手の癖なのか、途中で疲れてしまったのか、それとも描きたい部分がそこだけだったのかわかりませんが、三つとも話が唐突で、どれも演出やテーマは良いのに、その唐突な話の展開がぶち壊している感じでした。
 『写真』だとどう読んでも6と7ページが繋がっていない。急すぎて、意味がわからない。『For the Smile』は全体的にテンポが早すぎて、都合が良すぎる感が……。また文章を詰め込みすぎているので、読みづらい。
 最後の『雨あがり』は三作品の中で一番完成度は高いけれど、ラストに説得力がない。それでは物語として読者はスッキリしない。それこそご都合主義なイベントを起こさないとこの物語そのものに意味が持たない。
 それぞれにテーマを描こうとしているのはわかるし、その描き方としては間違っていないけれど、そこに全て『悲しみ』の要素を加えて『喜び』の要素がないのがもったいない。いっそどちらも捨てて、空気(雰囲気)物語にしたほうがこの絵なら似合う。
 絵もかけて文章もかけるのはすごい才能だと思うし、努力を感じさせるけれど、この三作を読む限りでは、どちらつかずといった感じで、もったいなさを感じる。絵をメインにした絵本にするか、文章をメインにした小説にするか、どちらかを選んで片方を集中的に練習すれば大きく飛躍しそう。

■【懐中天幕】:「懐中天幕Vol.8.9」「横浜骨董調査局」:http://home.att.ne.jp/red/tumugyun/

 読めたのは、「Vol.8」のみです。丁寧な形で整ったライトノベルであり、作者が今迄いくつも作品を書いてきたのを感じさせる内容でした。完結しておらず、次に続くのが残念ですが、9も買ってあるので一安心です。
 全体的には良く練られていてご当地感のある安定した作品。でも、安定は同時に平凡とも言えるわけで、『ダイバー』だけだと奇抜さがないので目新しさがないのは仕方なく、あとは物語の内容勝負になるのが難しいところ。
 まぁだいぶ前の作品なので、今の作者がどういう文章を書いているかは皆目見当がつかないのですが、この当時の癖としては「――」このダッシュの多用が見受けられます。ちょっと多すぎるので、もし現在でも多いようなら推敲の際に表現を変えてみないことには今後の伸びが厳しいかもしれません。
 また、丁寧に作られている分、ほつれがよく目立ちました。例えば、冒頭の部分で『タイムアップ』とありますけど、『タイムアップ』があるならどうしてもっと素早く行動しないのか? のんびりとしているのか、時間を気にしないのか謎です。しかもタイムアップに関しての補足がまったくない。
 次に主人公二人の悩みがあまりに直球過ぎて、説明が来るまでのツッコミを抑える気持ちがすごかったです。構成としては、確かにそこで書くのが一番なんだと思うんですけど、あからさま過ぎて読み手としてはしんどい。
 これだけ書けていれば十分ですし、もう見習うべき点はいっぱいありすぎるんですけど、そこら辺を今後の作品作りに生かして欲しいなぁと思い書きました。

【Concealed Wings】:「Scenery with a book」「marmelo」「Dolce」:http://hisaka.whitesnow.jp/cw/

 10冊買った百合小説のうち3冊読み終わったので、先行してこちらの感想を書きます。全て一昨年の作品なので、今更どうこう書いても意味ないんでしょうけれど、全体としては、午後の紅茶でも飲みながら何も考えず、何も影響を受けず、似たり寄ったりな百合話を楽しむ作品ですね。
 3冊とも百合としてはよくご理解されていて、それはもう堪能させていただいたのですが、身悶えするほどではなく、あともう一押しが欲しいような、不意打ちが欲しいような、といったところです。全体としてどれも作風が似通っていて内容も似通っているのが最大の欠点。もちろん、この作風が好きという人にしてみれば安定して楽しめるのですが、僕のようなひねくれた人間だともう少しバラエティに富んだ作品を読みたいとも思います。
 表現や構成はしっかりとしていて『最高機密』でルビに『トップシークレット』なんてあるのが最高に素敵でした。たくさん、落ち込ませていただきました。
 一昨年の作品なので、今どういう作品を書かれているのかは残り7作でわかるのかわからないのかそれこそわかりませんが、もし全て同じような作品ならば、一度毛色の違う作品を書いてみるのもオススメしたいなぁと思いました。

読書感想文後

 辛い文章と毒のある書き方ばかりで、さぞ読者の気分を害したと思いますが、そういう書き方しか僕は出来ません。それでも、何かを伝えたいという気持ちが抑えきれないので、もうどうしようもないというか。
 出来るなら、【三途の川】:「司書の樋口さんと図書委員の私」のような人が読みたくなる文章を書きたいものです。この感想文を作者に読んでもらいたいような、読んでもらいたくないような、複雑な気分なのは内容がこれだからですよねぇ。
 色々と書いておりますが、読んだ作品全てに賞賛の声を上げてはおります。すべてにおいて凹ませてもらい、今迄書いてきた自分の作品全てが駄作に思えて仕方ないくらいなので、本当に負け犬の遠吠えです。
 ああ、もう! ちくしょう! 僕も努力しよう。