地を駆ける虹

地を駆ける虹 (MF文庫J)

地を駆ける虹 (MF文庫J)

 MF文庫で新人賞を受賞した作品ということで手を出してみました。
 総評としては、表現能力はそこそこ高いけれどストーリーの構成能力に問題がある、といったところでしょうか。新人という点から見れば及第点をあげられるけれど、誰かに薦められるレベルには達していないし、他の人のデビュー作と比べると稚拙さが目に付く出来でした。
 正直、デビュー作でこの物語でいくのはかなり冒険だったような気がします。もう少し無難な出来にして完成度を高めた方が面白かったと思います。
 主人公の生い立ちや性格、背景などはどれもなかなか面白いものでした。でも、くどい。ゲド戦記並に主人公がテーマみたいなものを口にしていて萎えた。そこは描いてはいけない。物語の流れで描かなければいけない。わかりやすいんですけど、それはダメです。
 次に三章が問題。これはおかしい。どう考えてもノーラという女性の行動理由がわからない。そこでどうして口車に載せられるのかわからない。最後の最後まで努力して、それでもどうにもならなくて、絶望してからでないとおかしい気がします。まだ説得も何も試していない。相手の身体に触れることすらしていない。ただ状況に驚いて、どうしたらいいの、どうしたらいいの? と困っていたらあからさまに怪しい人がこうこうこうだから、こうすればいいよ、と言ったことを素直に信じて行動して相手を傷つけて絶望してるだけ、なにそれ意味不明。しかもそんなこと……って、思うんならダメもとでも他のこと試せよ、先に。何も思い浮かばないって、それ自体おかしいでしょ?
 僕はここで決定的に萎えました。
 
 それでも読んでみたんですけれど、主人公の仲間の描写がもったいない。せっかくステレオタイプなキャラを配置したんだったらもっときちんと掘り下げて、仲間との絆や個性を作り上げてほしかった。どうも中途半端だ。そのくせ、ラストはあの展開ではもうどうしようもない。
 彼らの戦闘自体はなかなか面白みがあった。色の組み合わせというところが無限の可能性を得られそうだ。どうせなら限定された色の組み合わせだけで他の属性との対決を描いていく、そんな冒険活劇にしてほしかったかもしれない。結果的に、その可能性はゼロみたいですけど。
 
 戦闘といえば、敵の必殺技の出し方は下手。どうせなら戦闘の舞台となる場所のいたるところにすでにその必殺技の痕跡が残されている方が、敵の必殺技の伏線にもなるし、相手の恐ろしさを印象付けることが出来ただろう。
 伏線という視点で見れば、この作品に伏線らしい伏線がなかった。
 主人公の能力なんて、どうしてその能力に決定されたのか激しく謎。
 細かい伏線を張り巡らせようと思えば多分もっとなんとかなったはず。たとえば、ロットの認定書番号とか入れる余地はあったし、どうして〜が遅れてきたのか伏線がないとご都合主義にしか思えない。
 責任取る、とか言うならもっと早く来いよ、何で遅れてるんだよ、理由不明かよ、作者のご都合主義じゃん。あからさまに〜が〜なるために遅れてきました、みたいな感じじゃないですか。
 
 言い出したら限りがないくらい荒い作品でした。
 それでも、表現能力や舞台設定能力は光るものがあったし、新人らしさが前面に出ていたといっても過言ではない(いい意味で)。
 あとはストーリー構成能力を磨いてほしい。
 出来れば、これの続編は書かないでほしい。もし出たら買わないだろう。
 もうちょっと技術を上げてきてほしいと思う。光るものは確かにある。削り出した原石みたいなものだ。光り輝く可能性はある。それをうまく磨けるかどうかはMF文庫の編集部の力か。